整形外科


骨折

直接的、または間接的は外力が加わることで骨の連続性が断たれた状態を骨折と言います。交通事故、落下など強い衝撃が加わった場合や一部の病気により起こります。

症状 痛み、跛行、変形などがみられます。骨折部周囲の神経や血管を傷つけ、障害を起こすこともあります。

原因 

交通事故、落下、踏みつけなどで起こることが多いです。小型犬では椅子などから降りただけでも前足を骨折することがあるので注意が必要です。

診断

異常部位のレントゲン撮影で診断します。

治療

骨折部にLCPプレートを用いて治療します。ギブスなどの保存療法は癒合不全や変形癒合を引き起こす場合があるため、当院では外科手術を行っています。橈骨は長期間骨プレートを当てていると骨が細くなる(骨痩せ)ので、骨折部の癒合が確認されたら、プレート固定に用いているスクリューを一部抜いて固定強度を弱め、骨痩せを防ぎます。


橈尺骨骨折

小型犬に多い骨折です。交通事故など強い外傷がなくても、椅子やベッドから自分で降りた時に骨折する場合もあります。

症状 患肢の挙上がみられます。

原因 

高所からの落下、外傷など。運動性の高いプードルなどはソファやベッドで遊んでいる時に骨折する場合もあります。

診断

レントゲン検査で診断します。解放骨折している場合もあるので、毛刈りをして確認する場合もあります。

治療

以前はピンニングや副木固定が行われていましたが、ピンニングの術後

癒合不全や合併症の発生率が非常に高く、また副木固定は特殊な条件下以外は適用にはなりません。当院ではLCPプレートを用いた治療を行います。LCPプレートは従来のプレートに比べてプレートの強度が高く、強固な固定が可能になります。術後3〜7日ほどで歩けるようになります。プレートの固定期間が長いくなると「骨痩せ」といってプレート固定した骨が細くなることがあります。骨痩せを防ぐために骨癒合が完了したら使用しているスクリューを減らし、プレートの固定強度を弱めることで骨痩せを防ぎます。プレートの抜去については賛否両論ありますが、当院ではプレート抜去後の再骨折を防ぐためプレートの除去を基本的には行いません。感染やプレートの露出がある場合は除去します。



骨折の癒合不全

骨折部位が通常の治療期間を経ても骨癒合に至らない場合を癒合不全といいます。小型犬の橈骨(前腕の骨)骨折は発生が多く、副木固定やピンニングによる整復では癒合不全を引き起こしやすいのが特徴です。

症状 跛行、疼痛などが続きます。肢を着くことができず挙上したままの場合もあります。

原因 

小型犬の橈骨(前腕の骨)、特に遠位(手首の近く)は血流が乏しく、周囲の筋肉も薄いので癒合不全が起こりやすい場所です。副木固定、ピンニングは骨の固定強度が弱いため癒合不全を引き起こす割合が高いです。

診断

レントゲン検査と治療経過から診断します。

治療

癒合不全を起こしている骨の修復を促すため、外科手術を行います。小型犬の橈骨遠位の癒合不全は手術を行っても治りが悪い場合もあるため、骨折初期にプレートなどを用いた適切な治療を行う必要があります。癒合不全の治療としては、癒合不全部位の骨切り、プレート固定、海綿骨移植などを行います。



膝蓋骨脱臼

膝蓋骨(膝のお皿)が正常な位置から逸脱した状態です。内側にはずれる内方脱臼と、外側にはずれる外方脱臼があります。発生頻度が内方脱臼が多く、特に小型犬に発症します。両側性グレードⅣの膝蓋骨脱臼の場合、膝が伸びきらず曲げたままで歩いていることもあります。

症状 疼痛、跛行、患肢の挙上などがみられます。習慣的に脱臼している場合は、疼痛を示さないこともあります。

原因 

膝関節周囲の筋肉や骨の形成異常などが存在し、進行することで膝蓋骨の脱臼が起こります。強い外力が加わった場合に起こることもあります。

診断

膝蓋骨の触診、レントゲン検査で診断します。脱臼の程度によりグレードがⅠからⅣまで分かれます。しかし、グレードが高いからといって跛行や疼痛が重度とは限りません。

治療

基本的にはグレードⅡ以上が手術の適用になります。手術内容はグレードで異なりますが、縫工筋・内側広筋切離、滑車溝造溝、内側関節包切開、脛骨粗面転移、脛骨内旋制動などを組み合わせて行います。成長期の場合は、成長版を阻害するのを避けるため脛骨粗面転移は行わず、成長が終わった段階で再手術することもあります。様々な術式が報告されていますが、どの術式も100%再脱臼を防ぐものではありません。



前十字靭帯断裂

前十字靭帯は大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)を繋ぐ靭帯で、膝関節の安定性を保っています。前十字靭帯断裂は後肢跛行(びっこ)の主な原因で、小型犬、大型犬を問わず発生します。膝蓋骨脱臼があると前十字靭帯に負担がかかり、前十字靭帯断裂に関連すると考えられています。

症状

後肢の跛行(びっこ)や挙上(足を挙げて着けない)がみられます。痛みは発症当初にみられますが、徐々におさまります。明らかな痛みを示さないこともあります。

原因 

強い外力が加わることで前十字靭帯断裂が起こることもありますが、加齢に伴い前十字靭帯が脆弱化し、明らかな外力が加わらなくても前十字靭帯断裂を起こすことがあります。他にも肥満や内分泌疾患(副腎皮質機能亢進症など)、免疫介在性疾患、腫瘍などがあります。習慣性の膝蓋骨脱臼があると前十字靭帯に負担をかけるため、前十字靭帯断裂のリスクが上昇します。

診断

触診、レントゲン検査、超音波検査、関節液検査、血液検査などを行います。暴れてしまい検査ができない場合は鎮静が必要になります。

治療

前十字靭帯断裂の治療は早期に外科手術を行い、変形性関節症(不可逆的な関節の変形)の進行を遅らせることです。どのような治療を行っても変形性関節症は進みますが、膝関節の不安定な状態が続くと変形性関節症の進行速度は外科手術を行った場合に比べ速く、変形性関節症が進んだ段階で手術を行っても跛行が残ることがあります。保存的治療は体重が15kg未満の場合有効なことがありますが、15kg以上の場合は保存的治療の効果がほとんどみられないことがあります。前十字靭帯断裂に半月板損傷が併発するとより強い痛みを起こし、外科手術で損傷した半月板を取り除く必要があります。人医療の場合は半月板縫合を行うこともありますが、犬の半月板は小さいため縫合することは困難です。



大腿骨頭壊死症(レッグ・カルベ・ペルテス病)

大腿骨頭(骨盤と太ももの骨が関節している部分)の血流が何らかの原因で阻害される結果、大腿骨頭の壊死、崩壊が起こる疾患です。血流阻害の原因は不明です。若い小型犬に多く発生します。片側の大腿骨頭に発生することが多く、跛行、痛みが見られます。徐々に悪化し、突然全く負重できなくなることがあります。治療は鎮痛剤を使い、痛みがとれなければ手術(大腿骨頭切除)を行います。上のレントゲン写真は左側の大腿骨頭が溶け始めており手術を行ったものです。

症状

後肢の片側跛行、痛み。約10%の確率で両側後肢に発生します。

原因 

大腿骨頭の血流阻害により起こります。血流阻害の原因は不明です。

診断

症状、触診、レントゲン検査で診断します。

治療

跛行、痛みが軽度の場合は鎮痛剤で治療します。徐々に、あるいは急に悪化することがあり、鎮痛剤に反応しない場合は大腿骨頭切除を行います。術後は早期にリハビリを行います。大腿骨頭切除は痛みの原因をを取り除くことを目的とした、いわゆる救済措置ですが、術後は良好な経過を辿ることがほとんどです。



椎間板ヘルニア

背骨の間にある椎間板が脊髄神経を圧迫、障害する疾患です。主な症状は痛みとマヒで、障害されている部位により症状の発現場所が異なります。また、神経の障害の程度により、マヒの程度も変わってきます。

症状が軽い場合はお薬の注射、内服により症状を取ることができますが、再発することも多いです。症状が重い、もしくは根本的に治療を希望される場合は手術により神経の圧迫物質を取り除きます。

造影剤が途中(矢印)で途切れており、この部分の神経が圧迫を受けています。
造影剤が途中(矢印)で途切れており、この部分の神経が圧迫を受けています。


リウマチ

ダックスフンド、チワワに多い自己免疫疾患です。手首、足首の関節が破壊され、脱臼、変形し跛行が見られるようになります。症状とレントゲン、リウマチ因子検査で診断します。治療はステロイド、抗リウマチ薬を使用します。

ベタ足で歩くようになった、朝のこわばり、休息後の跛行が見られる時は注意が必要です。