消化器科


急性胃腸炎

胃や腸に炎症が起きている状態で、下痢や嘔吐などの消化器症状が発症して数日以内のものを急性、数週間以上持続しているものを慢性と区別しています。

症状

下痢、嘔吐、食欲不振、元気消失などがみられます。

原因 

感染症、異物、中毒などが挙げられます。

診断

触診、検便、血液検査、レントゲン検査、超音波検査などを行います。

治療

元気、食欲がある場合は触診、検便など最低限の検査を行い、抗生剤、整腸剤などで治療を行います。治療に反応しない、慢性経過を辿る、状態不良の場合は上記の検査を行い、検査結果に沿った治療を行います。



炎症性腸疾患(IBD)

炎症性腸疾患(IBD)とは慢性的に下痢、軟便、嘔吐などの消化器症状が続く病気のことです。はっきりとした原因は不明ですが、食事や腸内細菌、腸管免疫系などが関係する免疫疾患と考えられています。

症状

3週間以上続く消化器症状(下痢、嘔吐、食欲不振、体重減少、血便、粘液便など)が特徴です。

原因 

食事に含まれているアレルゲンや、腸内細菌に対する過剰な免疫反応、腸管免疫異常などが考えられています。ですが、低アレルギー食や抗生剤、整腸剤を使用しても完全に良くなることはありません。

診断

①3週間以上の長期的な消化器疾患があること

②食餌療法、抗生剤、整腸剤を使用しても完全に治らないこと

③IBD以外が原因で消化管に炎症を起こす疾患がないこと

④内視鏡検査を行い消化管粘膜に炎症性変化が病理組織検査でみつかること

⑤ステロイドや免疫抑制剤で消化器症状がおさまること

以上を満たした場合、IBDと診断します。③のIBD以外の消化器症状を起こす疾患を探すことが重要で、慢性消化器疾患を起こす病気として膵炎、甲状腺疾患、アジソン病、腫瘍、寄生虫などがあります。そのため、糞便検査、血液検査、ホルモン検査、レントゲン検査、超音波検査、内視鏡検査を組み合わせて診断します。

診断に苦慮するケースとして低悪性度の消化管型リンパ腫があります。症状もIBDと似ており、病理組織検査でも見分けることが難しい場合があります。近年では病理組織検査に加えてクローナリティ検査(遺伝子検査)を行うことで診断精度が向上しています。

治療

ステロイドがIBDに対する第一選択薬になります。ステロイドを使わないと症状を完全にコントロールすることは難しいです。治療初期は高用量のステロイドを用い、症状の改善を確認しながら徐々に減らしていきます。ステロイドだけでは症状が収まらない場合は免疫抑制剤やクロラムブシル(経口抗癌剤。比較的副作用が軽微)を併用します。また、食事や腸内細菌がIBDに関与していると考えられているため、低アレルギー食や抗生剤、また整腸剤を併用します。治療に対する反応が悪かったり、重度の体重減少などがある場合は予後不良の可能性があります。また、柴犬は治療を行っても反応が悪い場合もあるため注意が必要です。



腸リンパ管拡張症

腸のリンパ管が閉塞・拡張する病気です。リンパ管が閉塞することで腸管内に蛋白質や脂質などを含んだリンパ液が流れ出し、血液中の蛋白質(アルブミン)が減少します(低アルブミン血症)。低アルブミン血症になると腹水貯留の原因になります。

症状

下痢、削痩、腹水などがみられますが、無症状の場合もあり、下痢など消化器症状がないという理由だけでこの病気を否定することはできません。

原因 

消化管に炎症、うっ血、出血を起こす、いかなる疾患によっても腸リンパ管拡張症は起こります。原因の多くとしては炎症性腸疾患(IBD)や消化管腫瘍がありますが、他に原因がないか検査するひつようがあります。好発犬種としてヨークシャーテリアやマルチーズが挙げられます。

診断

血液検査で低アルブミン血症や低コレステロール血症などがみられます。糞便検査、尿検査、レントゲン検査、超音波検査などを行い、他に低アルブミン血症を起こす病気がないか調べます。内視鏡検査で腸粘膜組織を採取し、病理組織検査を行い診断します。

治療

腸リンパ管拡張症を起こしている原因に対して治療を行います。原因が特定できない場合もあるため、その場合は以下の治療を行います。

①食餌療法:超低脂肪食が基本になります。処方食や手作り食(ササミ、ジャガイモ、低脂肪カッテージチーズなど)を使用します。手作り食を使用する場合は、栄養バランスが乱れる可能性もあるため、低アルブミン血症が改善したら処方食に切り替えます。

②ステロイド治療:多くの場合、食餌療法だけでは低アルブミン血症が改善されないため、ステロイドの使用が必要になります。高用量から開始し、症状の改善を確認しながら徐々に下げていきます。重症例では内服でステロイドを投与した場合、消化管から吸収されない可能性があるため注射でステロイドを投与します。

③腹水に対する治療:血液中のアルブミン値が1.5g/dL以下になると腹水や胸水、皮下浮腫が起こります。食餌療法やステロイドで低アルブミン血症が改善されれば腹水などは吸収されますが、大量に溜まっており、呼吸困難などの症状が出ている場合は穿刺して抜去します。一度に大量に抜去すると低血圧や電解質異常を起こすため、少しずつ抜去したり利尿剤を併用します。

④抗血栓療法:腸リンパ管拡張症は血栓症を併発する場合があります。そのため、診断した時点で予防的に抗血栓薬を投与します。食事療法やステロイドに反応して良くなる場合もありますが、長期的な治療が必要になったり、治療に反応せず亡くなる場合もあります。